山で恐竜に会った日

僕は23歳の頃、新入社員として就職した会社を辞めて実家に戻っていたことがあった。

半年くらい僕は完全にニートだった。

実家にひきこもりRPGツクール2000でひたすら遊んでいたら母親が

「たまには外に出なさい」

と言ってきた。

とはいえ僕の実家は北海道の片田舎、出かけると言っても山しかない。

仕方ないので山に行くことにした。

 

実家の近所につつじ公園という公園がある。ちょっとした山の上にある公園だ。

平日の午前中、子供すらいない静かな山の上に僕は立っていた。

やたらと大きい首長竜みたいな遊具がある。

僕は家で握ってきたおにぎりを食べながら山の上から小さな田舎町を見下ろしていた。

仕事を辞めて実家に戻り、こうして山の上の公園でおにぎりを食べている。

学生時代の仲の良かった友達は今頃真面目に働いているんだろうなぁ。一生懸命金を稼いでるんだろうなぁ。

一方、僕は田舎の実家に戻り、山の上の公園でおにぎりを食べている。

具はツナマヨだ。

おにぎりを食べ終わった後、ペットボトルに入れてきた麦茶を飲み干した。

 

おにぎりを食べたら暇だった。

とはいえ、今すぐ帰ってもお母さんに怒られるだけだ。

もう少し時間を潰して帰ろう。

 

公園からもう少し奥に行ってみることにした。

僕の身長ほどに高い草が茂っている。

懐かしいなぁ。

小学生の頃、もうすこし先に行ったところに友達と秘密基地を作ったな。

そこでダンスの練習とかしてたんだった。

草をかきわけて奥へと進む。

もう少しで懐かしい秘密基地に着く。

 

ガサ。

 

草をかきわけて広場へ出た。

そこに恐竜がいた。

思わず「うわっ」っと声が出た。

「恐竜だ……」

 

僕の実家は北海道勇払郡むかわ町穂別というところだ。

首長竜の化石が出たり、アンモナイトの化石が出たりして、それ以来恐竜の街になっていた。

厳密に言えば首長竜は恐竜じゃないけども、まぁ細かいことはいいだろう。

つつじ公園の奥にいた恐竜は、そんな穂別町が恐竜の街として売り出していた時に作った恐竜のオブジェだった。

半ば朽ち果てた恐竜のオブジェ。

もうメンテナンスもされていない公園の奥まったところで、雑草や植物が生い茂っているところで恐竜のオブジェがあったのだ。

正直怖かった。

 

そんなこんなで非日常的な幻想を抱いた23歳のニートの時の思い出。

ちなみに恐竜の街としては大分忘れられていたが、数年前に「ムカワ竜」とかいうマジもんの恐竜の化石を発掘したので、もう一度恐竜の街として再興している。

頑張れ、僕らのムカワ竜。頑張れ、僕らのホベツアラキリュウ。

ちなみにホベツアラキリュウの愛称はホッピーだ。

 

あとどうでもいいけど、こないだ博物館からアンモナイトの化石が盗まれたらしい。

だけど盗まれたアンモナイトは無事に見つかったらしいので安心だ。