憧れの温野菜サラダ

最近はお粥ばかり食べている。

というのも、中国が舞台の小説を読んでいたら登場人物がやたらお粥を食べていたからだ。

炊飯器で手軽に五分粥を作れるので、鶏出汁を入れたり、お酢をかけたり、たまご粥にしたり色々と工夫できて面白い。少ないお米でお腹いっぱいになるので、貧乏人にもありがたい。

こうして本から影響を受けて食事をすることがある。アニメやドラマなんかで美味しそうに食べている物って食べたくなりません?

本で読んだ食事で、特別思い出に残っているのは温野菜サラダだ。

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中学生の時に祖父が入院していた。祖母や親が甲斐甲斐しく祖父の世話をしている間、暇を持て余した僕は待合室の雑誌をよく読んでいた。

その一冊に載っていたエッセイで読んだのが温野菜サラダだった。

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休日、けだるくも気持ちの良い目覚め。

軽く何かを腹に入れようと冷蔵庫を開ける。

冷蔵庫にはいくつかの野菜があった。ブロッコリー、トマト、アスパラ、サヤエンドウ、レタス。

ブロッコリーとアスパラ、サヤエンドウをさっと茹で、適当に切ったトマトとレタスと一緒にガラスボウルに入れる。

オリーブオイルとコショウをふりかけたら出来上がり。シンプルな味付け。

出来上がったサラダを木製フォークで食べていく。

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大体、そんな感じだったと思う。エッセイの内容は覚えていないが、そのサラダのことだけは今でも記憶に残っている。

冷蔵庫にある適当な野菜でシンプルな温野菜サラダを作る。手間はかかっていないが、なんともオシャレだ。

透明なガラスボウルの中で乱雑に踊る野菜たちも美しい。

それ以来、僕の中ではこの温野菜サラダは憧れなのだ。

実に格好良い食事だ。

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食べようと思えば自分で作って食べられるのだが、そういうもんではない。

自然体で余った野菜で適当に温野菜サラダを作って食べる。

そのライフスタイルと一緒じゃなきゃダメなのだ。

多分、そんなに美味しいもんでもないだろうし。

余裕のある大人の女性的なライフスタイルこみでの憧れなのだ。

手間をかけてないくせに自然体でオシャレなサラダを作っちゃうのが格好良いのだ。

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僕はそんな余裕のある大人の女性にはまだなれていない。

お腹が空いてて手間もかけたくない時は冷や飯に納豆をかけて食う。それで十分なのだ。

手間をかけずに栄養もとっちゃう。

端々にオシャレ感を出す。

皿に盛り付けずにガラスボウルから直接食べるのだが、ガラスボウルってのがまたオシャレじゃあないか。

あぁ、憧れの温野菜サラダ。いつかは食べてみたいものだ。

気怠い午前中に。