12月、北海道の冬は厳しい。
雪が道を覆い、気温は氷点下。間違っても外には出たくない。
暖かい部屋でストーブにあたりつつ一人、酒を飲む。
煙草を呑みたくなり机の上の煙草をつかむが、中身は空である。あぁ、煙草が切れた。
ほろ酔い気分。体も温かい。暖房の効いた心地よい室内。
絶対に寒い外には出たくない。
だが、煙草を吸いたいという欲求には勝てず、重い腰を上げて出かける準備をする。
部屋着の上から適当に防寒具を羽織り、寒い夜の下へと歩き出す。
真っ暗な住宅街にポツポツと街灯がともる。
道は雪に覆われて怪しく輝いている。
吐き出す息の白さに見とれながら、一歩一歩とゆっくり冬の道を歩く。
遠くに見えるコンビニの灯りを目指して、ひたすら歩く。
耳に響くのは心地よい音楽。最近ラジオで知ったアーティスト、竹内アンナのアルバムを聞きながら歩く。
まだ冬ははじまったばかりだ。これから数ヶ月、厳しい寒さに耐えながら生きなくてはならない。
酒で紅潮した頬に冷たい風がピリっとする。
そのうちコンビニにたどりつき、煙草を買う。ずっと吸いたかった。
カウンターのおでんに心惹かれながらも、コンビニを出る。
ふと冬の空を眺めながら、思う。
「家に帰って、酒を飲みながら買ったばかりの煙草をふかしたい」
また10分ほどの道を歩いて帰らなければいけない。
珍しく車が通った。
静かな夜の住宅街に響く車の走行音。
なんとなく寂しい気持ちになる。
耳には相変わらず心地より音楽が響いている。
「ティロリン」
やけに明るい通知音が聞こえた。
スマホをポケットから取り出しチェックする。
仲の良い女の子からのメッセージだった。
あわよくば付き合いたいと思っている女性からのメッセージに心が温まる。
家に帰ったら返事をしよう。
凍える夜道を歩く。
家に帰るのが楽しみだ。
暖かい部屋、呑みかけのお酒、買ったばかりの煙草、想い人への返事。
楽しいことがいっぱい待っている。
あぁ。
ならば、この凍える寒い道も悪くない。
震える肩を抱きながら夜道を急ぐ。
早く帰らなくては。
今夜も寒くなりそうだった。